2011年5月7日土曜日

代償(4日間の代わりに13日間)

ある人から間接的に、このたびの震災で見損なっていた映画が、さる二番館で上映されるという情報を得て、見に行くなら今日から火曜日までの4日間だと思っていたのだが、今日は起きるのが遅くなった(朝1回きりの上映だから)ので行けず、仕方がない、代償として見たのが、これだ。

ロジャー・ドナルドソン『13デイズ』(アメリカ合衆国、2000)ケヴィン・コスナー他


キューバの10月危機(キューバ危機)のホットな13日間のホワイトハウスでの駆け引きを映画化したもの。

フィクションとして見た場合(つまり、史実との突き合わせなどを今は措くとして)、ソ連側の動向を詳しく描写せず、徹底してホワイトハウス内部のドラマとして描いている点は、正解。フルシチョフ側からしかけられるメッセージの謎を巡ってケネディたちが右往左往するのだから。国務長官ロバート・マクナマラの「これは戦争ではない。言語なんだ。これまで誰も知り得なかった言語。それを通じてケネディとフルシチョフがコミュニケーションを取っている」という台詞が水際立つことになる。

ただし、たとえば合衆国の戦闘機が一機、キューバ領空内で撃ち落とされているのだが、それがソ連のミサイルによって撃墜されるまでに2-3分のシークエンスをわざわざ設けているのは、いかにも冗長なドラマティズムといった感じだ。劇場で見ていたらむずむずしただろうなと思う。外交駆け引きのドラマにスペクタクルは要らない。

この13日間に関しては官邸内にいた弟ロバート・ケネディの回想録があり、その翻訳も存在する。これが原作だと思われがちだが、映画が明示しているところによると、原作……というか、依拠したのは、以下の一冊。

Ernest R. May & Philip D. Zelikow, The Kennedy Tapes: Inside the White House During the Cuban Missile Crisis, Harvard U. P. 1997

しかし、これがキューバ危機であることを思うとき、キューバの存在感があまりにも希薄であるのは、十分予想しうることとはいえ、残念なこと。カストロは、そういえば、ラモネに対して、そのことに腹を立てているかのようなことを言っていた。つまり、キューバの頭ごなしに米ソの交渉が進んだことに対する憤慨。あれがグワンタナモ返還のための交渉に発展しなかったことへの失望。

事実かどうか知らないが、映画の中では、国連大使アドレイ・ジョンソンが、危機のごく初期に提案していたのだ。トルコのミサイル撤退とグワンタナモの返還を交換条件にしよう、と。トルコからの撤退は実現した。グワンタナモは残された。

先日のビン・ラディンの暗殺に際して、彼の居所の決定的な証拠となった情報はグワンタナモに収容されたテロリスト仲間からもたらされたものだとのこと。メキシコの新聞La Jornadaはそう報じていた。