2年生の授業でAntonio Múñoz Molina, El invierno en Lisboa (Seix Barral, 1987) アントニオ・ムニョス=モリーナ『リスボンの冬』を読んでいる。ピアニストのサンティアゴ・ビラルボ(あるいはジャコモ・ドルフィン)が恋愛によるいざこざに巻き込まれる話だ。語り手「私」による旧友サンティアゴの描写から始まる小説で、音楽とその評価をめぐる文章が2年生にはさすがに難しいようだ。
で、この小説、本の宣伝文句によれば、ディジー・ガレスピーを客演に迎えて映画化されているとのこと。ガレスピーは93年に死んでいるので、だいぶ晩年の映画出演ということになる。
ぜひ観てみたいものだと思う。
しかし、ぼくはてっきりこのサンティアゴの役をガレスピーがやったのかと思い込んでいたが、先日の授業中、ふと気づいた。ガレスピーはトランペット奏者なのだから、ピアニストのビラルボをやるはずはない。
小説にはもう死んだとされる孤高のトランペット奏者ビリー・スワンというのが出てくる。ビラルボがよく一緒に組んでいたミュージシャンだ。この人のレコードに参加したりしたと。であれは、きっとガレスピーはこの人の役をやったのだろう。
映画、観てみたいな、と思ったのだった。というのも、今日のぼくの一枚目は Dizzy's Big 4 だったからだ。そして二枚目が Oscar Peterson and Dizzy Gillespie 。オスカー・ピーターソンの代わりにサンティアゴ・ビラルボことジャコモ・ドルフィンがピアノを弾いていたと考えると、楽しくなる。時間に余裕ができたら、学生にも聴いていただきたいな。ものの本によればビリー・スワンは現代最高のトランペッターのひとりとのことだったが、私が聴いたレコードの中で彼は唯一無二の存在だった、というような記述が小説にはあって、そんな箇所を実感できればと思うのだ。
ところで、ビリー・スワンというミュージシャンは実在する。でも、ジャンル違いだし、年齢が違いすぎるし、きっとムニョス=モリーナはこの人のことを知らず、偶然この名をつけただけなのだろう。
ジャズ映画といえばウディ・アレン。ウディ・アレンといえばセントラル・パーク。セントラル・パークといえば、紅葉。セントラル・パークではないが、紅葉と夕陽の公園。ぼくのウィンドウズ・マシンのデスクトップも、これではないが、紅葉の公園だ。