研究室に入ったら、もっとひどかった。平積みにした書類や本、安定の悪かった本、棚をはみ出していたファルケースや大きい辞書が机や床に散乱していた。
最悪だったのは、このところ使わなくなっていたプリンタ、コピーなどの複合機を棚の上に載せていたのだが、それが後ろの戸棚の上に落下していた。割れ物がなくて幸い。そして、その隣にあった愛しの『ラテンアメリカ主義のレトリック』の在庫もひと包み、10冊、まるごと落ちていた。
以前みんなで飲んだときに飲み残してそのまま放置していたワインのボトルが落ちなくてまだ救われた。
でも、ともかく、この研究室の惨状をみて、ぼくは反語的にわが家のアパートの堅牢さ、耐震構造の確かさを知ったのだった。だって、5冊ばかりの本が落ちていただけなのだから! 届いたばかりのブックタワーだって微動だにしていなかったのだから!