2011年3月6日日曜日

熱気に当てられる

昨日は日本オペラ振興会主催、藤原歌劇団公演、ドニゼッティ作曲『ルチア』(『ランメルモールのルチア』)を、東京文化会館で。

ダブルキャストで、昨日はルチアを佐藤美枝子が、エドガルドを村上敏明が演じる布陣だった。演奏は東京フィル。指揮は園田 隆一郎、演出は岩田達宗。

近頃評判のこの演出家、大学時代の先輩にあたる。フランス語学科の出身だが、縁あって面識のある方。同期の友人に誘われて観に行った次第(会場で岩田さんの同期のフランス語科の、その後大学院に進んだのでそこで面識を得た人物に会った。久しぶりに。とある大学でフランス語を教えている方だ)。ぼくらと同世代ということは、小劇場の全盛期に演劇的教養を身につけたということだ。その後第三舞台で研鑽を積み、今ではオペラの演出をやっている。さすがにそういう経歴だけあって、舞台はシンプルな坂道状の装置といくつかの幕というかパネルというか、そうしたものだけという造り。こういう造りだと、古典的に作り込んだ舞台装置よりも演技する者がキビキビしていなければならない箇所が出てくるように思う。それが引き出せて良かったのじゃなかろうか。

スコットの『ラマムアの花嫁』が原案というこのオペラは、スコットランドの危機の時代を背景に、敵対する家族のメンバーであるルチアとエドガルドが恋に落ちるが、兄やその仲間の画策によって引き裂かれ、ルチアは代わりに夫になったアルトゥーロを殺して自らも果て、それを聞いたエドガルドも自身の命を絶つというストーリー。

ルチアの狂乱が最大の聞かせどころであるこのオペラ。佐藤美枝子はピッコロ(だと思う)の音と張り合いながら熱演していた。オペラなんて話を知らないと聞いていて苦痛なので、事前に予習し、アンナ・モッフォの歌った盤を聴いたのだけど、やはりこの種のシーンはCDで聴いているだけよりも、演技が伴うと具体化されて胸に迫る。

脇を固める合唱の人たちの衣装(軍服外套)と配列がルチアを追い詰めていく感じをよく表現していたように思う。

夜は新宿の老舗タブラオ、エル・フラメンコにてペドロ・コルドバ他の熱演を堪能。来店していたクリスティーナ・オヨスに紹介していただいた。昼間オペラを聴きに行った。ドニゼッティの『ルチア』だ、と言ったら「『ランメルモールの——』?」と返ってきた。うむ。さすがに教養豊かな方だ。ぼくは実はこの作品、誘われるまで知らなかったのだけどな。

オペラといいフラメンコといい、熱に当てられるイベントだ。おかげで(?)今朝は10時まで気を失っていた。つまり朝寝した。