スペイン語の初級、中級くらいの授業も持っている。スペイン語の授業などやることは決まっているし、毎年同じことの繰り返しだと思われるかもしれない。そうには違いない。でも意外に変化はある。毎年毎年、毎回毎回、ひとりひとり反応は違うし、去年のやり方が今年うまくいくとは限らない。教材も毎年違う。
今年は2年生の講読でJuan José Millás の Letra muerta というのを使っている。ただし、教材用にリライトされたやつ。これを足がかりにして、慣れたらステップアップ。本物の文学作品に取り組もうという姿勢だ。
ぼくは意外にこの作家が好きだ。昨日そんな話をしたら、ある人がわたしも好きだとおっしゃった。意外に人気作家だ。
フワン・ホセ・ミリャースだ。Juan は最近ではフアンとする表記が主流だ。それをかたくなにフワンと書くことについては、今はこだわらない。ミリャースだ。Millás。
学生に書いてもらったのを見ていると、ミジャスとミリャスが半々くらいだろうか? ミヤスというのはいないようだ。スペイン語の ll の音表記の問題。頭が痛いところだ。パエーリャ、セビーリャなどと同じ、あの問題だ。バルガス=リョサかバルガス=ジョサかの問題。
どうもスペイン人は「リャ」に近い音を出し、その他の国々では「ジャ」に近いよ、という人がいるみたいだ。でもそんなはずはない。「俺ってカスティージャ人だからさ、ジャって発音しちゃうんだよね」と主張したカスティーリャ(スペイン中央部)の人間をぼくは知っている。どう聞いたって「ジャ」ではないメキシコ人もたくさん知っている(それにしても、「スペインでは……、イスパノアメリカでは……」という乱暴極まりない分類が、多すぎる気がする。スペインとメキシコのスペイン語が違うなら、メキシコとアルゼンチンのスペイン語だってだいぶ違うのに。ちなみに、アルゼンチンでは「シャ」と言え)。「リャ」でもないけど「ジャ」でもない、だからといって日本語の感覚で「ヤ」でも困る、というのがいちばんしっくりくるのだが。
少なくとも、既に定着しているバルガス=リョサに逆らってまでバルガス=ジョサとすることの意義は認められないと思う(検索でヒットする機会を逃してしまう)。ギリェルモというのは、日本語として見たときに語呂が悪そうに見えるので、ぼくはギジェルモと書くことが多い。それ以外はリェとしている。
でも新たに記す名なら、あまりこだわらない。ミリャースでもミジャースでもいいかと思う。どちらがいいか? それともミヤース?
と、ここまで書いてブラウザを開いたら、ツイッター上で、こんなのを教えてもらった。リャマ・フォント。これも ll 問題だ。リャマ・フォント? ジャマ・フオント? ヤマ・フォント? それにしても、F や T のリャマのアクロバティックな体勢!