2009年3月30日月曜日

たまにはオスカー

受賞してもアカデミー賞なんざすっぽかしたウッディ・アレンが好きだからといってオスカーを受賞した映画を見ないわけではない。とりわけ試写会に呼んでくれるなら。しかも監督がダニー・ボイルなら。

……そんなわけで、試写会に呼んでもらってギャガ試写室で見てきた。ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)。

メキシコに行っていた時、既に現地で封切られていたので、本当は我が家から六本木までの交通費以下の値段で見ようと思えば見られた作品。

日本では「クイズ$ミリオネア」の名で放送されていたTVのクイズ番組。イギリスを発祥地として世界各国でほぼ同一規格で放送されたこの番組は、まさにグローバル・スタンダードという名詞を想起させるし、一夜にして大金持ちが誕生する(金持ちとそうではない人間とが分けられる)という点においても、グローバリズムの時代の申し子ともいうべき。そこに出演して獲得賞金をのばしていった少年が、詐欺をしたんじゃないかと警察で取り調べを受けるはめになり、スラム育ちの無学の少年でも答えを知り得るにいたる過程を、回想の形で説明していく。最後には最高賞金を獲得するが、必ずしもハッピー・エンディングとも言えないところなどはいい。一攫千金の夢の物語というよりは、あくまでも社会を描こうとするもの。

さすがは『トレイン・スポッティング』の監督だけあってリズムがいい。成長した主人公が面と向き合うことになった兄がムンバイの街について語るところなどは、トマス・グティエレス=アレアの映画で、倒壊するハバナの美しさが語られるシーンと対照をなしているかのようだった。

「それは書かれていた」という表現が「運命だった」と訳されていて、それはそれで映画字幕としては問題ないと思うのだが、ひねりの味が落ちて悩ましいところ。

さすがに話題作だけあって、平日昼間の試写だったが、人がいっぱいだった。夕方から仕事の打ち合わせ(これも映画に関係する仕事だ)で研究室に行かねばならなかったのだが、途中、新宿と吉祥寺によったら、吉祥寺では3人もの教え子と顔を合わせた。うむ。悪いことはできない。悪いことなどしていないけど。