で、J. Pressのコットンスーツどころか、それの数分の1の値段でユニクロで(初!)買った、コーデュロイのハウンズトゥース……ってつまり千鳥格子のスーツを着て(スリーピースなのだけどヴェストは着けずに)、出かけていった。
出かけていく以前の話。1時限の2年生の授業前、ぼくをじっと見つめる学生がいた。どうした? ――ネクタイなんですね。珍しい。
うむ。彼女はぼくがネクタイをしていることに驚いたらしい。スーツを着ていることには驚かないのか? 普段は小汚いジーンズに覆われている下半身にまとった、上着と同じ柄、同じ素材のボトムズには気づかないか?
それだけスーツであることを主張しないスーツなのだろう。ネクタイだってあまり主張したくなかったから、黒地に小さなドットのニットタイにしたのだけどな。……それとも、「ネクタイ」とは、スーツ&ネクタイの堤喩なのか?
出かけていった用事の後の話。レセプションというかカクテルというか、そうしたものでチリ・ワインを楽しんでいる最中、顔なじみの学生たちが、それはユニクロのスーツでしょうと言ってきた。うむ。彼女たちには卒業式の日にその旨を伝え、自慢したのであった。見抜かれた。鋭い。
で、夕方、出かけていった。セルバンテス文化センターに。打ち合わせをして、登壇。ぼくは「あとがき」に書いたポイントに沿い、「あとがき」では触れなかった例を出して『野生の探偵たち』の面白さを説いた。その前にMさんの詩の朗読に聴き入り、その後にN先生にお叱りを受け、質問への回答の優先権を一番若いMさんに譲った。
会場前で『野生の探偵たち』と、併せて『通話』も即売(というのか、この場合?)していたが、売り上げは順調とのこと。
カクテルの後、白水社の人たちと軍鶏鍋をつついていると、知り合いの学生たちが乱入。オーケストラの定演に来なかったのかと追求される。
さらにその後、ちょっと飲み直して、結局、午前様。一緒にタクシーに乗ったボラーニョ第3弾『2666』の翻訳者Uさんは杉並区の某所で早々と下車。ああ、都心近くに住みたい……
用意していた名刺を1枚残らず使い果たした。ぼくにあっては珍しいこと。
あ、そうそう。会場は満員だった。ぼくの学生や元学生、東大の学生なども来ていたが、それ以外にも多くの方々がいらっしゃった。なんと、ヨーロッパにいらっしゃるはずの方まで!