『グレン・ミラー物語』以来というべきか、フェリーニの『オーケストラ・リハーサル』以来というべきか、ともかく、音楽(家)を題材にした映画はついつい観たくなる。『無伴奏シャコンヌ』とかイシュトヴァーン・サボーの『ミーティング・ヴィーナス』とか、『バード』(イーストウッドだ!)とか、オリヴァー・ストーンの『ドアーズ』とか……
で、今回、見逃しちゃうかもなとあきらめていたけど、追加上映のおかげでまだ観ることのできた、ラデュ・ミヘイレアニュ『オーケストラ!』(2009)をシネスイッチ銀座で。
ブレジネフ時代の1980年、体制批判をしたユダヤ人演奏家をかばったことで不興をかこつことになりボリショイ劇場の清掃夫にみをやつしていた往年の名指揮者アンドレイ・フィリポフ(アレクセイ・グシュコブ)が、正式のオーケストラに対する出演依頼のファクスを盗み出し、かつての仲間たちとボリショイ・オーケストラを騙って再起を期す話。演目となるチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」にまつわる団員たちやアンドレイの思い出が、ソリストとして出演を要請したヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)の人生、ペレストロイカ前夜のソ連邦の暗い時代の出来事と絡まってくるところが泣かせどころ。全体としては喜劇仕立てで楽しい。
マリオ・バルガス=リョサの『チボの狂宴』(作品社)とか、エンリケ・ビラ=マタスの『ポータブル文学小史』(平凡社)とか、色々と楽しみな新刊の知らせが届く。