ドイツ、オランダ、フランスの例を対比的に描写していてわかりやすく、西洋世界とイスラームの対立が宗教の対立ではなくイスラム教の(たぶんに反進歩史観的な)実践と西洋近代の(たぶんに進歩史観的な)意識(力)の対立なのだと説く。(写真は黒板風景)
イスラームとヨーロッパの関係史から説き起こし、最終章をマドリードの2004.04.11の爆破でしめるのだから、ここにはあってしかるべきヨーロッパの国がないだろうと、つまりスペインが忘れられているだろうといいたいところだが、イスラームを国家という枠組みにとらわれたヨーロッパの思考でとらえるのが間違いの基だというのが内藤の主張なのだから、まあそのことは問わないでおこう。
ダニエル・ブルマン『僕と未来とブエノスアイレス』(アルゼンチン、フランス、イタリア、スペイン、2003)がブエノスアイレスのユダヤ人たちを描いているところから始まって、ユダヤ人かムスリムを、……と思ったのだが、バレンボイムの自伝なんてのも違うような気がするし、……と逡巡しながら読んだ本。