2011年11月27日日曜日

講演と公演

そんなわけで、隣の芝生は常に青い立教大学に行ってきた。第42回現代のラテンアメリカ 講演会。

ぼくは原稿を用意し、しかもそれを読まずにだいぶ端折って話し、大御所原広司は気持ちよさそうに思い出を手繰りながら、自らの仕事を顧みた。

ぼくが話したのは集合的記憶の場としてのメキシコ市の3つの広場を巡るテクストの数々、国家と宗教、宗教と民衆、国家と個人、などが記憶を巡って思い思いのテクストを紡ぐ場。こうしたメキシコ市のスポットをあと6つ7つまとめて、本にする予定だ。

日曜日は燐光群『たった一人の戦争』作・演出、坂手洋二@座・高円寺。檜谷(ひのたに)地下学センターという、やがて核廃棄物処分場となるべく、そのための研究を行う地下1,000メートルの施設で、施設公開の見学に来た客のうち、反逆的なグループが、政府の思惑を晴らすどころか、それぞれにさまざまな思惑を抱えた人物であることが露呈されていくという近未来SF。観客(つまりわれわれ)もこのセンターの見学者のひとりとして、まずはツアーに参加、劇場の漆黒を経験するというおまけつき。加えて、事前に取ったアンケートによっても、参加が可能。最近翻訳が出たばかりのナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』幾島幸子、村上由見子訳(岩波書店、2011)なども匂わせながら、福島以後の日本を考えるSFに仕上がっている。

パンフレットの「ごあいさつとお願い」の文言が優れている。

そこは蛍光灯に照らされた無機的な灰色の世界です。同じ目的の施設なので当然なのですが、フィンランド映画『100,000年後の安全』に登場する「オンカロ(隠れ場所、の意味)」を想起させる、静謐な回廊があります。

影響というか原典を逆転の上、こんなふうにさりげなく示唆するこの感覚は、すばらしい。開始前、読みながらくすっと笑うと、もう『たった一人の戦争』の世界に入っている、という仕掛けだ。