えっ? 木村榮一『ラテンアメリカ十大小説』(岩波新書、2011)ですか? そりゃあ、読んでいますとも。職業柄、目は通してますよ。いや、目を通すってことは読んでるんですよ。でもね、だからっていきなり20日までに書評を書けってのは急な話じゃありませんか。なにしろ、今年の11月は殺人的に忙しい。本務校の授業が8コマ、リレー講義という名のオムニバス授業が当たっているから、今月は軒並みもう1コマ。そして非常勤が2コマ。合計11コマの授業です。年末までに終えなければならない翻訳は200ページ以上。締め切りすぎて書かねばならない原稿が100枚。11月26日と12月3日には講演をしなきゃならないんで、その準備もある。今日も今日とて本1冊読んでレポートをまとめたばかり……忙しいんですから。
でもね、こういうことは、あっしが断るとまた誰かのところにたらい回しで……ってんでしょ、わかりましたよ。書きゃあいいんでしょ、書きゃあ……書きますよ。明日は休みだっていうじゃありませんか。だからね、明日のうちにすらすらと……
と文字どおりそう言ったわけではないが、そんなやりとりをしたところに送られてきたのが、
安藤哲行『現代ラテンアメリカ文学併走:ブームからポスト・ボラーニョまで』(松籟社、2011)
安藤さんといえば翻訳もいくつもあるのだが、同時に『ユリイカ』に「ワールドカルチャーマップ」なんて連載をしていて、既に知られた作家の新作やまだ知られていない作家の作品などを紹介してきた人でもある。ぼくもたまには眺めて、自らの不勉強を反省し、新たな作家の存在を教えてもらったりしたものだった。その『ユリイカ』連載のものを中心にした短い文章を第2部に置き、それを挟むようにして比較的長い文章(やはり『ユリイカ』などに折に触れて書いてきたもの)6本を集めたのが、本書。木村榮一の本がいわゆるラテンアメリカ文学の〈ブーム〉とその直後のアジェンデまでを扱ったものであるなら、この本はそれ以後の展開を同時的にルポルタージュしたもの。並べて読み、20世紀を一気に駆け抜けるというのもひとつの読み方。
ちょっと開いて目をやるだけで、自分の勉強不足が実感される。ああ、俺はやっぱり本を読まない人間だったのだなあ……