2010年2月11日木曜日

今日は祝祭日なのか?

昨日は配給会社の方に誘っていただいて、トークショーつき試写で以下の映画を。

キャリー・ジョージ・フクナガ『闇の列車、光の旅』(アメリカ、メキシコ、2009)

製作総指揮にガエル・ガルシア=ベルナルやディエゴ・ルナが名を連ねるが、出ているわけではない。彼らの製作会社カナナが加わっているということ。サンダンスをくぐり抜けてきた若い監督の初長編。

ホンジュラスから母親の働く合衆国へと向けて旅立った少女サイラ(パウリーナ・ガイタン)が北・中米全域にネットワークを持つギャング団MS-13のメンバーでありながら裏切ったために追われることになったメキシコ最南部の町の少年カスペル/ウィリー(エドガル・フローレス)と出会い、貨物列車の上で旅をする話。初夏に公開とのこと。

移民問題、その移民の副産物としての少年ギャング団の問題などを扱っている。会場のセルバンテス文化センターには、どうやらその方面に関心を持っているらしい人々がたくさん来ていた。というのは、上映後のトークショーで質問に立った人々がそうだったからだ。

フクナガはVictoria para chino(2005)という、やはり移民を扱った短編でサンダンスの賞を獲ったということで、社会派とみなされるのだろうが、家族を描くことに興味があるのだと言っていた。2週間ほど前に柴田元幸さんがアメリカ文学が家族を書くようになってきたと語っていたことを思い出した。

ところで、ここで描かれた少年ギャング団MS-13(マラ・サルバトゥルチャ)というのは、エルサルバドル移民がロサンジェルスでチカーノの不良たちから身を守るために作ったグループ。これが凶悪化したために強制送還された連中が、内戦ですさんだエルサルバドルでさらに凶悪化し、ネットワークを広げたのだそうだ。

二人称単数の代名詞にvosが使われる、voseoの現象も描かれ、傍系の興味も尽きない作品。フクナガ自身は文法的ミスは多々犯しながらも(典型的なアメリカ人らしいアメリカ英語的訛りのほとんどない)スペイン語で作品を語っていた。