2010年10月4日月曜日

そう書かせているのは誰だ?

ぼくはスペイン語を教えている。スペイン語専攻の学生たちに対する読解の授業を担当している。ついでに言えば、今年は副専攻語と呼ばれる、ようするに第2外国語のスペイン語も担当している。で、気になることがある。

「私たちはその先生に質問をする」
「その喫茶店に入ろう」

こうした訳語が少なからずある。それぞれ、

Hacemos unas preguntas al profesor.
Vamos a entrar en la cafetería.

の訳。うーむ、と唸ってしまう。つまり定冠詞(el, la, los, las)のある単語に機械的に「その」をつけて訳語をつくる学生がいるのだ。少なからず。

きっとこれが、悪名高い「受験英語」の弊害なのだろうなと予想する。定冠詞に何らかの特定性というか有徵性を認め、それを示すために「その」をつけるというわけだ。

でもねえ、有徵であるならば、何もかも「その」で済ませるのはあまりにも芸がない。それが第一点。そしてなにより、スペイン語においては定冠詞なんて、たんなる添え物なのだよな。というのが第二点。そのことは何度も口を酸っぱくして言っているつもりなんだけどな。

「その」なんてつけるな。君の人生の悲しみが、その「その」一点に集中しているのだぞ。

以上は前期の試験を見直して、改めての感想。