とにかく、かゆいのだ。掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)というやつだ。手のひら(掌)と足の裏(蹠)に膿疱ができ、やがて皮がむけて、また膿疱ができ……というようにしてなかなか治らない皮膚病だ。ぼくの場合、足の裏は無事だけれども、手のひらがひどい。皮がむけてぼろぼろ落ちてくる。あまりにもひどいので、写真に撮った(しかも現時点ではその写真よりもひどい状態になつている)。それをここにアップしたくてしかたがないのだが、そんな醜いものを見せるのもいやだ。美しいものだけを見ていたいじゃないか。
でも、人にはそうしたグロテスクなものを明るみに出したいという気持もある。露悪趣味。露出狂。スカトロジー。ネクロフィリア、等々。それを発露したいけれども、不謹慎だと思ってしないでいる。でもしたい。こういう感情もかゆみに似ている。
そのかゆみを和らげてくれるのが、こうした趣味を文学作品にまで昇華させたもの。その種の文学作品であるカルロス・バルマセーダ『ブエノスアイレス食堂』の装丁色校が、さっき届いた。すばらしいできだ。いわゆる「ジャケ買い」してしまいそうだ。前に何かのときに書いたかもしれないが、この瞬間がぼくは何より好きだ。これも見せたいけど見せられない。別のかゆみを抱えてしまった。ああ!……
と喜んでばかりもいられない。今月末が締めきりですよ、と催促が来たのだ。不幸と幸福は一緒くたになってやって来る。ある文章。三本合計で130枚ばかりの原稿を、ぼくは書かなければならないことになっている。らしい。今月末までに。
かゆい。仕事のことを考えたらかゆくなってきた。やりたいけどやれない、むずむずとした感情なんだろうな。Mac Book Proを前にして感じるかゆみ。これも実存のめまいなのだ……?