2011年7月5日火曜日

自分が怖い

若い二人組に取り囲まれというのは、基本的には恥ずかしい話だ。

直接に暴力がふるわれたわけではない。金銭のやりとりがあったわけでもない(示談、あるいは恐喝)。だからたいした問題でもない。時々、もめている人々を道路脇や駅で見かけるが、今日、ぼくがそんなことをしでかし、周囲から胡乱な目でみられたということだ。恥ずかしいだけだ。

でも、それをすぐ前に書かざるを得なかったのは、これまで経験したことのないある種の興奮をぼくが覚えていたからだ。書き終えて前腕部の張り(なぜかそんなものを感じていた)はなくなったし、興奮はだいぶおさまったように思う。でも、まだ収めきれない何かが、ぼくの裡にはある。

ぼくだって若いころ、スポーツくらいしたことはある。だから興奮がどんなものか知っている。高校生くらいまでのうちに何度か殴り合いの喧嘩もしたことがある。暴力への衝動がどういうものかもわかっている。それがもたらす恐怖もわかっている……はずだ。

でも、ぼくは今日、数時間前、今までのどの経験においても感じ得なかった何かを感じた。だいたい、面と向かって言い合いをするときには、どちらかといえば言葉が出てこないで苦労するタイプだが、今日は何かに支配されて二人組の若者に言葉の上でも対抗していた。あまり面と向かって人と目を合わせないタイプだけれども、正面からふたりを睨みつけていた。異様なまでに興奮し、かつ極めて冷静だった。金髪の運転手の腕の入れ墨がやけにカラフラだ、なんてことさえ考えていた。

ぼくはたぶん、そのとき、いわば極限状態にあったのだ。それまで自分がそんなものを裡に抱えているとも知らなかった何者かを解放したのだ。その何者かにみずから律されることを受け入れたのだ。これから先、二度とまた解放しようなどとは思わないその何者かを、大袈裟に名づけていたずらにスキャンダルを起こすつもりはないけれども、そんなものを発見した自分が驚きだ。これを飼い慣らしていかなければならいのかと思うと、心底つらくなる。

なんだか厄介な人間だと、自分でも思う。

……もうこのくらい書けば、いい加減、仕事に戻れるだろうか? 自分を取り戻せるだろうか?