静岡に行ってきた。「ふじのくに せかい演劇祭2011」の一環だが、SPACで上演された『シモン・ボリバル、夢の断片(ソロ・ボリバル)』ウィリアム・オスピーナ作、オマール・ポラス演出・主演、古屋雄一郎翻訳・字幕製作。
独立200周年に作られ、上演されたオスピーナの『ボリバル』を当初上演するつもりだったらしい。ところが、例の地震と原発事故で出演者たちが来日を拒否し、場合によってはポラスのひとり芝居になるかもしれないという危機だったらしい。そんな劇をどう立て直すのだろうと俄然興味が沸いた。
座席数300ばかりの静岡県立芸術劇場のその客席をふさぎ、舞台の中に150くらい(かな?)の客席を作って小劇場の規模のスペースを作って見せた。小劇場全盛のころに演劇的教養形成をしたぼくとしては、むしろ馴染みのつくり。音楽も静岡入りしてから新たに作ったアレサントドロ・ラトッチのオジナル(最後に一曲だけショスタコーヴィチの『ジャズ組曲』の一部が使われていた)。もとはもっと賑やかな編成の音楽がついていたらしい。
ポラスは演出家としてまず概要を説明する人物となり、そしてボリバルになったかと思うと、彼の教養形成を語るためにシモン・ロドリゲスを演じて見せた。ここで活躍するのが、彼が得意とするコメディア・デッラルテふうの仮面。『ドン・キホーテ』で使うはずの仮面だったという。この仮面をかぶって少し老人ふうの演技をするポラスの芸達者は光った。
男女ふたりずつのSPACの役者を聞き手に語り聞かせる形式で話を進めて、ミランダ将軍との確執、妻マヌエリータの悲しみなどを描いてうまくまとめた。
満員の盛況だった。