2011年6月16日木曜日

電子化を言祝ぐ

東京外国語大学出版会が出している冊子『ピエリア』の第2号までがサイト上で読めるようになった。ブログからリンクが貼ってある

現在第3号まで発行された『ピエリア』。その創刊号にぼくは「ラブラレターのすすめ」というのを書いた。友人のKは「あれがお前の最高の文章だ」などと言っていた。ほかにもいろいろと書いてきたのだけどな。それらは評価してくれないのかな。いじけるな。

でも、ともかく、それを書いた。そして本のお薦めのコーナーでも、この記事に関連するものを勧めた。

第2号では本を薦めているだけ。

第3号ではインタビューをうけ、「私の読書道」というコーナーに掲載。「書物の記憶はつながっている」というタイトル。これのPDF化は秋頃とのこと。昨日訪ねてきた卒業生は、それに目を通し、「ああ、なるほど、そうそう、その世代ってこんなの読んでました、っていかにもな本のラインナップですよね」と。うーむ。見透かされたようだ。

インタビュー中に語ったことで、掲載されなかった面白いエピソードを。

ある日、新小金井街道を車で走っていると、とてもすてきな木造建築物が見えた。助手席に乗った人物に、ぼくは、いとも自然に、「斎藤病院ってまだあるんだね……」と話しかけた。斎藤茂吉の興した病院だ。はじめて見たはずのぼくは、瞬時にそれを認識してこの発言に及んだのだ。

不思議だ。ぼくは斎藤茂吉も息子の斎藤茂太も、その弟の北杜夫も読んだことはない。ただ1冊、北杜夫のエッセイをのぞいては。そして、思い出したのは、中学生のころに読んだその北のエッセイの巻末に、斎藤病院は「東京都小金井市」にあるとして写真入りで紹介されていたのだ。

ぼくはつまり、読んだことを忘れかけていた中学のころの読書体験による記憶を保持していて、実物の斎藤病院を見たときにその記憶をよみがえらせ、反応したのだ。

すごいことじゃないか?