もう日付けがかわったので、昨日のことだ。10日(金)は授業が終わってから渋谷のCCレモンホールに行ってきた。昔の渋谷公会堂だ。
Rolex Time Day 2011 Amami Chronicle Live
さすがはRolex主催だけあって、時の記念日にこれでもかというくらい時間を意味する単語の並んだコンサート名だ。出演は元ちとせ、中孝介、坪山豊。
早い話が、同郷のよしみ、というやつだ。これに協力しているある雑誌(SWITCHだ)の編集者の方が、そういえば元ちとせと同郷だそうじゃないか、来るか、と誘ってくれたので。
第1部はいずれも大島に身を包んだ中と元の若い二人に囲まれた坪山豊が「朝顔節」(これは独りで)「朝花節」「俊良主節」「くるだんど節」といったスタンダードの島唄ナンバーに加え、「ワイド節」(これも既にスタンダードだが)の作者である坪山の作になる「綾蝶節」、そしてやはりスタンダード「豊年節」を披露。
「豊年節」にいたって1階のフロアから誰かの吹く指笛が聞こえたときには、思わずぼくも手を口の中に持っていった。すんでの所で反応して指笛を返すところだったのだ。本能的に、というのが言い過ぎだとしたら、せめて条件反射として。30年以上前に捨てた故郷とはいえ、三つ子の魂百まで、その故郷で身につけた行動特性は強かったと、自らの来し方を渋谷の真ん中で再認識したのだった。
それにしても、元ちとせの表現力(主に裏声の張りと強さ)は、島唄でも健在であることが改めて確認された。
第2部は元ちとせ、中孝介がそれぞれのナンバーを何曲かずつ歌った。途中「しわじゃ しわじゃ」で始まる「糸繰り節」を歌った直後の中のその心配(しわ)が的中したわけではあるまいが、直後に歌った「花」の音が割れていたのが少し残念(PAの問題)。代表作中の代表作だけに惜しい。それからまた元ちとせが加わって、二人のユニット「お中元」による曲、さらには坪山豊を呼び入れ、祭りのクライマックスを飾るいつもの踊りのナンバーを三曲ほど。一曲目は「喜界やよい島」か? よく知らない曲だった。そして「ワイド節」、最後は「六調」。1階の平土間では、一目でそれとわかるしまんちゅと、そうでない人々が、最初はおずおずと数人だけ、後にほぼ全員を巻き込んで踊っていた(その手首の返し方を見れば、出自はおのずとわかる)。
ぼくは子供のころ、この踊りの輪にうまく加わることができずに、横で指笛を吹く役に徹していたのだ。没我にいたることのできない覚めた人間の、伴奏者根性。よくいえばヴォワイヤンの立場。でもその指笛すらもが、ひとつの条件反射の、没我の賜物だということを、前半早々に思い知らされた日だったという次第。
六調のクライマックスを2階から見下ろしていたぼくは、そりゃあ、指笛くらいは吹いていたさ。