ロマン・ガリの自伝的小説『夜明けの約束』(岩津航訳、共和国、2017)の映画化作品。母ひとり子ひとりの境遇でポーランドの街ヴィリノ(当初はロシア帝国、そして後にはリトアニア共和国)に育ったロマンが、母ニーナ・カツェフからフランスの大使になること、作家になること、軍人になること、などと期待をかけられ、現実にフランスに移住し、戦争に参加し、作家になるまでを描いたもの。ニーナ役をシャルロット・ゲンズブールが、成人したロマンをピエール・ニネが演じている。
母的なもの、母の期待などといったものが苦手な僕にとっては辛い話題で、それをロマン・ガリの一面で裏のような、他面では正反対のような育ち方をしたのではないかと思われるシャルロット・ゲンズブールが演じるのだから、余計に辛い。おまけにそれが2時間を超す大作ときている。が、なぜか不思議と飽きずに見ていられたのだから、面白かったのだ。
原作小説の翻訳もあるというのに、こんなタイトルにして、おまけに映画終盤の泣かせどころのエッセンスのような副題までつけているのだから、配給元の意図はきっと、母は強し、ってなメッセージとして見せたいということなのだろう。その意図がそれだけだと、やはり僕にとっては辛いに違いない。が、原題の直訳である「夜明けの約束」から始まるコメントが最後に流れ、配給元の意図を覆すものと理解できるような意味が露わになる。僕がほっとしたところ。
ゲンズブールが時間の経過に伴ってだんだん老けていく、メイクや演技で表現しているに違いないそのふけ方が、やけに印象に残りもする。
極めて実践的な教訓がひとつ:書け。常に書き続けろ。