2016年1月4日月曜日

引用/言い換えの技法

去年の4月から、起きるとNHKのTVニュースを見ることにしている。少なくとも流しておくことにしている。友人がメインのプレゼンターをしているからだ(主に5:00-6.25)。友人というか、教え子だ。でも教え子というよりは飲み仲間というほどのつき合いだ。

で、今朝、新年一番、その彼女が、春闘を前に連合の神津会長が「底上げが命題と述べた」などと発音したものだからびっくりした。飲み仲間とはいえ、仮にも教え子だ。かつては僕を師と呼んだ人物だ(呼ばれたことあったっけかな? まあいいや)。そんな人物が、仮にも日本語を生業とする人物が、日本語を間違えてどうする。

命題とは「真偽を判定することのできる文」(『広辞苑』)のことだ。「AはBである」という文章だ。「AはBでなければならない」(「景気? 給料? を底上げしなければならない」)は命題ではない。多くの人が陥りがちだけど、それだけにあまりにも有名なこうした誤法、仮にもNHKアナウンサーたるものが間違ってどうするのだ!

と思ったら、その神津某自身が言っているのだった。「最大の命題は底上げ」と。これがニュースの記事とビデオ。

まったく、連合の会長ともあろう者が間違っているのだ。

しかしなあ、そのフィルムを流すにしても、ニュース原稿までがその誤法を繰り返してどうする、と思うのだ。文章における引用なら「命題(ママ)は底上げ」などと処理して、間違ったのはこの引用元であると示すことができるのだが、口頭のニュースにおいては間違いなどは正して、言い換えて紹介してほしいものだ。(それにそもそも「底上げが最大の命題」は記事では「 」に括ってそう書いているけれども、これは正しい引用ですらないじゃないか。語順が違う)

言い換え。TVのニュースにとってはそれが最大の命題だ。へへ。いや、つまり、当為命題だ。至上命令だ。
(時々、「至上命題」なんて間違いを見かけるものな)
TVのニュースは、とりわけ重要な地位にある者の言葉は言い換えなければならない。とりわけ現在の為政者たちの、浮ついた情動的な、非論理的な自画自賛の言葉など、そのまま伝えてはいけない。「アベノミクス」ではなく「時代遅れで無効なことが今や自明視されているはずの新自由主義政策」と言わなければならない。正しい引用が言い換えに繋がり、言い換えが批判的検証に繫がるのだ。

まあ、きっとニュースライターが書いた原稿を読んでいるだけなのだろうが、友よ、願わくば為政者の言葉に騙されず、彼らの言葉を無批判に垂れ流しせず、批判的態度を保持していただきいものだ。