2015年8月4日火曜日

夏休みは始まらない

7月27日から8月1日にかけて、アテネ・フランセ文化センターではクリス・マルケル・セレクションが開催されていた。二度ほど見に行った。『サン・ソレイユ』日本版(池田理代子がナレーターをつとめる)と『笑う猫事件』を見たのだ。911以後に突然パリの街のあちこちに現れた笑う猫の落書きの謎と、911以後に行われたいくつかのパリのデモの様子を追ったもの。

『笑う猫事件』は8月1日のことで、その日は2つのレクチャーとシンポジウムまであった。半日をアテネ・フランセで過ごしたことになる。写真集『パッセンジャーズ』の写真における鏡としての窓の使い方(鏡像を映さない)を指摘する千葉文夫さんの話などに唸ったのだった。

8月3日は早稲田文学新人賞の授賞式。受賞作は中野睦夫「贄のとき」と桝田豊「小悪」。中野睦夫は前回の黒田夏子の受賞に刺激をうけたか? なんと同い年だそうだ。父親からなされる送金が父の退職後も彼の勤務していた役場名義になっていたことに不信を抱いた語り手が裏役人の裏秘書課なんて存在を知らされ、役場内に導かれ……という物語は、さすがにこの種の受賞作が常に持っているある種新鮮な魅力を発散している。そして、何よりも70歳代後半の文章が実に若々しく思える。面白いのだ。


この新人賞発表の『早稲田文学』には安保法案についての緊急アンケートが掲載されているが、ささやかながら僕も少しく意見している。