実は先週の土曜日にはわが家の比較的近所でレオナルド・ブラーボ(日本在住のアルゼンチン人ギタリスト)を聴きに行ったのだが、今日も、ギター。
大萩康司デビュー25thコンサート「原点回帰」レオ・ブローウェル室内楽曲集@東京文化会館小ホール。
同年代より下のアーティストなどをその活動のごく初期から認識していると、ついついこの人は俺が育てた、みたいなことを言いたくなるのが年寄りの悪い癖。そんな癖を発揮したくなるひとり、大萩康司ももう25年になるのか、しかもブローウェルをやるのか、これは聴きに行かねば、と思った次第。
定番中の定番「11月のある日」(これの前半部を下手なりに練習する、その自分の音に慣れてしまった今、大萩の演奏の美しさに目が覚める思いである)に始まり、松尾俊介(コンセルヴァトワールの同期生らしい)とのデュオで2曲。「トリプティコ」(3部曲)と「ミクロピェサス」(5曲=ピェサス=)、そしてメゾソプラノの波多野睦美を迎えての「愛の歌曲集」。歌曲は3曲だが、最後はガルシア=ロルカの詩のようだ。ブローウェルが歌のある曲を書いているのは知らなかった。初。波多野の透きとおるメゾソプラノの声が素晴らしかった。
休憩後、ふたたびソロで「鐘のなるキューバの風景」。いかにもブローウェルらしいミニマリズムと日常の音の擬声に満ちた曲。そして「クインテット(ギターと弦楽四重奏のために)」。これも初。大萩が高校生の頃、沖縄で村治佳織が演奏するのを聴いて興奮し、村治にきいてすぐに楽譜を手に入れた曲だそうだ。ヴァイオリンの瀬崎明日香、加藤えりな、ヴィオラの田原綾子、チェロの上森祥平とともに。特に2楽章でのヴィオラが存在感を放っていた。ブローウェルというと、指の横腹で6本の弦すべてをバーンと叩くフレーズが印象に残るのだが(たぶん、映画『低開発の記憶』の音楽に由来する)、ヴァイオリンも弓で弦を叩いたりしていた。楽しい曲だ。
アンコールはエリセオ・グレネ/ブローウェルの「キューバの子守歌(ペルスーズ)」、そして最後にふたたびの「11月のある日」。違うギターで弾くと違って聞こえるのである。
さばの味噌煮を頼んだら、思いがけず半身まるごとの味噌煮であった。

