2017年5月8日月曜日

映画は黄金週間後に

以前書いたような理由(リンク)から、月曜日は『方法異説』の細部をあまりにもないがしろにした手抜き翻訳に腹を立てることになる。

今日もだんだん腹が立ってきたので、頭を冷やすために映画に行ってきた。


ニューヨークからハリウッドにやって来たボブ(ジェシー・アイゼンバーグ)が、叔父で大物エージェントのフィル(スティーヴ・カレル)の下で働き始める。秘書のヴォニーことヴェロニカ(クリステン・スチュワート)に街を案内してもらったことから恋に落ちるが、ヴェロニカには恋人がいる。その相手というのは、実はフィル。フィルは一旦は離婚を決意しながら、やはり踏み切れずに別離。ヴォニーはボブとつき合うことに。が、フィルがやはり離婚し、ボブにも関係が知られてしまったヴォニーは結局、フィルを選ぶ。

傷心のままニューヨークに戻り、ギャングの兄ベン(コリー・ストール)が始めたナイトクラブに勤め、今やオーナーとなったボブは同名の別のヴェロニカ(ブレイク・ライヴリー)と知り合って結婚、子どもまで儲ける。そこにフィルがヴォニーを連れて商用でやって来る……

もっとも泣けるのは、ヴォニーがボブの妻が自分と同名だと知ったときに、小声で「すてき」と呟いたことだ。

ウディ・アレンの登場人物たちは実に簡単に恋に落ち、軽はずみに恋を失う。そしてずっとそのことを後悔して生きる。同じ後悔を、仮にも昔愛した相手が分かち合っているのだと気づくのが、同名というサイン。後悔を分かち合うということが愛の永続を保証していると言いたげに、恋人たちは微笑むのだ。

クリステン・スチュワートは美しい。いつものアレン映画のヒロイン同様、決して僕の好みではない(少なくとも、気にしたことのない相手)のに、実に魅力的に見え、恋に落ちそうになるから不思議だ。他のウディ・アレンの作品にも通じることだけれども、派手なアクションもセクシーな濡れ場もなく、そんなものがなくとも、たとえばセントラル・バークの池にかかる橋の上や砂浜の岩陰でのキスシーンひとつが、充分に官能的でスペクタキュラーであるということを証明してくれる映画。

帰宅後、Apple Musicで映画のサントラを聴きながらこれを書いている。

ちなみに、café societyは『ランダムハウス』の定義によれば「上流階級の人が集まるナイトクラブなどの常連」の意味なのだそうだ。


ニューヨークの、ヤンキーの上流階級は、カルペンティエールによれば、どんなに気取っていても何だか似合わない奇妙な、おかしな存在なのだそうだが。