2014年10月13日月曜日

黄色と緑の互換性について

ラテンビート映画祭で見てきた。アルベルト・アルベロ『解放者ボリバル』(ベネズエラ、スペイン、2013)

今をときめくグスタボ・ドゥダメルが音楽を担当する解放者の伝記映画。

これだけ劇的な人物の半生をいろいろと盛り込もうとするのだから、大変だ。さして英雄然としない、単なる金持ちのボンボンだった青年時代、妻マリア・テレサを失って失意のうちに過ごす時代、恩師シモン・ロドリゲスにさとされ、目覚めるパリ、ミランダ将軍との関係……等々。

たぶん、ハリウッドの超大作ほどの人数は動員していないのだけど、撮影用ヘリコプターなどを多用したカメラワークでかなりの大がかりなスペクタクルに作り上げ、見せてている。

実際にはボリーバルについての映画を撮るのなら、時期を小さく絞っても濃密な話が作れるのではないかという印象。

少し傍系の話を。前半、グアバの実が印象的に使われる。シモン(エドガル・ラミーレス)がスペインで得た妻マリア・テレサ(マリア・バルベルデ)に食べさせる、官能のシーン。彼女が黄熱病にかかってから食べさせるシーン、最初にカラカスを陥落してしばらくぶりに家に戻って来たボリーバルが、彼女の死んだベッドにグアバを一個置くシーン。それらで使われているグアバは、黄色い。が、ぼくの知る、ぼくの育った家の裏庭になっていたグアバ(ばんじろう、というのが和名)は緑色なのだ!

緑/黄の対照といえば、レモンがある。アメリカ大陸のスペイン語圏でいうlimónはむしろライムに似て、我々の認識する黄色い果物ではない。そのことはガルシア=マルケスもある辞書の定義について語りながら触れている。


ボリーバルは死んだ妻のベッドに黄色いレモンならぬグアバを置いていく。いろいろと想像させられる。