2016年4月29日金曜日

わたしの怖い物語


演出の田中麻衣子さんがこれを劇化したいと言ってきた時には、大胆にどこか1章だけを切り取って大幅に脚色するのだろうなと勝手に想像していたのだが、むしろ原作の各章の中身を残しつつ、一部を統合したり組み替えたりしていた。音楽(国広和毅、ときどきナレーターにもなる)と語り(李千鶴、ときどきキャストにもなる)が複雑なレトリックを解きほぐすのに役立っていた。

刑務所にいる父親に会いに行って迷子になるエピソードでは、紗のカーテンをスクリーン代わりにイラストをプロジェクターで投影し、うまく処理していた。そしてまたそのイラストが秀逸。チラシの絵もてがけたゆーないとの作のようだ。

『わたしの物語』って、怖い話だったのね、というのが感想。いや、怖い話だってことはわかっていた。でも、僕が感じていた怖さはセサルの母への憎しみの中にあったのだけど、人が演じると結末が輪をかけて怖いことがわかったということ。


会場は満員だった。