2014年5月1日木曜日

歯痛と若さは似ている……?

このところ歯を痛めているのだ。辛い。歯が痛いと何もやる気がしなくなる。ただぼんやりと1日を過ごしたりする。

何をやる気力もなく1日をぼんやりと過ごす。まるでこれは若い頃のようだ。特に思うような仕事がなく、焦っているときには、反語的に、無気力に漫然と1日を過ごしたものだ。

歯を痛めると若い頃に戻った気になる。若い頃に戻った気になる映画が見たくなる。


ポスターには若い三人が顔つき合わせて寝そべっている姿。男二人に女一人。『突然炎のごとく』の最強パターンだ。しかもこの三人、皆「ル」から始まる。ルアラ(シモーネ・イリエスク)、ルイス(アカウア・ソル)、それにルカ(ペドロ・ジ・ピエトロ)。冒頭近く、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァがブラジルの経済成長を誇る演説をするTV映像が流れる。そんな好景気を時代背景にしながら、この3人は、いわば、ワーキング・プアなのだ。

ルアラは空港の目の前に住み、熱帯魚の店で働いている。パイロットらしい中年男性に言い寄られている。結婚詐欺か? ルアラの恋人ルイスは、薬局で働いては管理薬物を不法に売ったりしている。店長のニコラウ(トニコ・ペレイラ)もそれには嚙んでいるようなのだが、さらに彼の目を盗んで薬を横流しし、自分自身も使っている。ルカは自らも刺青を入れているが、タトゥー入れを商売にしている。もちろん、儲からず、同居する祖母の年金をくすねて過ごしている。こうした3人組の何も起こらないけどいろいろある日常を追った物語。

3人の見せ方がうまい。映画とは加藤幹郎風に言えば「鏡の迷宮」だが、クローゼットの姿見をうまく使って3人を見せたりしている。木の葉の保護色となったカメレオンよろしく、途中までそこにルアラがいることに気づかないシーンがあったりする。ラストで3人が何もすることがなく、ただ呆然と座る絵も、なんだかいい。降りしきる雨と元気な亀、のぞき見する祖母、そしてただ座っているだけの若い3人。


映画の中では始終電話が鳴っている。これだけ鳴り続け、これだけ通話が成り立たない電話も、珍しい。それもまた歯の痛みを助長するような細部……いや、若い連中の焦りをいや増す細部。