2014年2月5日水曜日

Como si estuviéramos en un país recién independizado...

たまにTVを見ると面白い出来事に遭遇する。今日目撃したのは、あるCM。たぶん、英会話教室のものだと思う。

小さな女の子が、頼りなげに「翼をください」と、何だかかっこいいあんちゃんに頼むというもの。たぶん、そのかっこいいあんちゃんというのは、伊勢谷友介と言ったと思う。

そして海外大学への翼は英語だ、と続く。

海外はもっと広いぞ、という話題は今はさておいて、その女の子というのは医者になりたいから翼が欲しいのだという。つまり、医者になりたくて海外の大学に行きたいのだと。

なんだか面白い。

何が面白いかというと、これではまるで、日本にいては医者になれないみたいだと、そんな印象を抱いてしまうということなんだ。逆に、日本の国家試験を受けないと日本では医事行為ができないのだけどね、ブラックジャックの場合みたいに。

やがてNHK『テレビでスペイン語』での連載が終わるホルヘ・イサークス『マリーア』(1867)では、語り手のエフラインは医学の勉強のためにコロンビアを離れなければならなくなる。それが恋人マリーアとの別れだ。ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』ではヨーロッパで医学を学んできたフベナル・ウルビーノがフロレンティーノ・アリーサからフェルミーナ・ダーサを奪っていく。コロンビアの19世紀は医者と言えばヨーロッパで医学を学んだものだったのだ。

日本では医学をヨーロッパで学ばなければならなかったのは森鴎外くらいまでなのか? だとしてもそのときは英語ではなくドイツ語を学ばねば、という流れだったと思うけれども。

ともかく、学問が国語化されるというのは、独立国の独立の証だ。国内に医学部があって、そこで学べば医者になれるというのは、日本が普通の独立国としての条件を得ている(これが意外に少ない)という証左だ。

だったはずだ。

ところが、今、こうしたCMが描く世界では、ぼくらはまだきちんと独立を果たし得ていない国であるようなのだ。医学を学ぶに英語圏の(もはやドイツ語圏である必要は、確かに、ないと思うけど。でもスペイン語圏のキューバという選択肢だってあるよ、と言いたい)国に行かなければならないらしいのだ。


やれやれ。ぼくらはずいぶん短期間にたいそうなものを失ってしまったようだ……