2014年2月2日日曜日

俺はひどく興奮しているぜ!

ペドロ・アルモドバル『アイム・ソー・エキサイテッド』(スペイン、2013)

の邦題は、劇中で流れるポインター・シスターズの歌のタイトルから取ったのだろうが、映画の英題もこれなのか? 原題は Los amantes pasajeros. Pasajero は飛行機の乗客の意でもあり、同時に「一時的な、その場の」等々の意味の形容詞でもあるので、かけことばになっている。Amanteは「愛人、恋人」。

整備係の不始末から着陸不能な状態になったマドリード発メキシコD.F.行ペニンスラ航空(字幕ではペニンシュラ)の飛行機が、不時着場所を探してスペインの上空をうろつく。その間、ビジネス・クラスに乗り合わせた乗客と、3人ともゲイのCA、それにコックピットの2人のパイロットが繰り広げるシチュエーション・コメディ。霊能力のようなものを持っているために、行方不明者を捜しに行く女性(ロラ・ドウェニャス)、何かにつけてクレームをつけるポルノ女優(セシリア・ロス)、業務上のトラウマから噓がつけなくなったおしゃべりチーフ・パーサーのホセラ(ハビエル・カマラ)、詐欺まがいの融資が発覚して告発されそうな銀行頭取(ホセ・ルイス・トリーホ。パンフにはホとの表記)、二枚目俳優くずれのリカルド・ガラン(ギジェルモ・トレード。役者の名がギレルモなのは今さら始まった表記ではないが、なぜかこの役名、字幕ではハランと。gがなんでもハ行だのとの思い込みがあるのか? 台詞を聞けばわかることなのに)らのクセのある連中が、緊急用の電話で外部と連絡を取り、それぞれの抱える問題を露呈していく。実におかしい。しまいにはバレンシア水に入れたメスカリンで乱交パーティーの様相を呈す。なんだかヘンだ。

ロスがいて、バンデーラスも(ペネロペ・クルスもだが)最初にちょい役で出てくる。パンフレットなどはアルモドバルの原点回帰を謳っている。一度メロドラマに大きく舵を切ったアルモドバルが当初のキッチュさを取り戻した、と。なるほど、副操縦士ベニート(ウーゴ・シルバなのだが、パンフにはユーゴ・シルヴァと)が独りでコックピットに座り、寝ているんだか性的快楽に喘いでいるんだか、その表情を外から撮った図は秀逸も秀逸。『神経衰弱ぎりぎりの女たち』の空港へ向かうシーンに匹敵するのではいるまいか。

でも、そうなのかな? これは原点回帰なのかな? 詳しくは言えないけれども、最後近く、新婚旅行の若いふたりの乗客が滑り台を降りてくるところがスローモーションで展開されることなどは、もっと多義的なように思う。


Sudaca(スペイン人たちが南米人に対して使う蔑称)という言葉に反応して「俺はsudacaではない。メキシコ人だ」と答えるメキシコ人殺し屋(ホセ・マリーア・ヤスピックだが、パンフではホ・マリア・ヤピック)が離陸早々ボラーニョの『2666』を取り出し、ずっと読んでいるところなどは小憎らしい演出。ついでにいえば、ある種典型的なメキシコ人がメキシコは中米ではないし、ましてや南米ではない、と主張する(事実、北米だし)文化的背景も、一応、お忘れなく。