わが家にはアイロン台がある。捨てずに持ってきてしまった。小さなアイロンもある。アイロン台を捨てなかったのは、それがそこにあることに最後まで気づかず、引っ越し屋に運ばれてしまったからだ。道理で、学生に笑いながら「アイロンかけましょうよ」と言われるわけだ。
村上春樹の小説の主人公じゃあるまいし、アイロンがけなんて、そんなにこまめにはできない。
逆にわが家にはかつてバーミックスがあったのに、今はなくなっている。類似品みたいなものが残っているだけだ。
ランチョン・マットが2組だか3組だかある。買った記憶もないのに。
この間売却したコンパクト・コンポはいつの間にかメーカーが変わっていた。
なぜだ?
そんなことを考えるたびに、ぼくは坂口安吾を思い出す。安吾のどのテクストだったかは……まだ本の荷ほどきが終わっていないので、探しようがない。探し出したとしても、言わない。
あーあ。