2020年1月6日月曜日

悔いの残ることばかり


以前書いたように(リンク)バレリア・ルイセリ『俺の歯の話』松本健二訳(白水社、2019)をあるところに紹介する予定だ。その原稿を今日仕上げたのだった。

が、言いたいことの半分も書けなかった。言いたいことがそれだけ多いのだ。それだけ面白い小説だと思うのだ。

いちばんの問題は、これが英語版とスペイン語版でだいぶ違うことであり、翻訳は英語版を底本としていることではあるだろう。前回の(リンク先での)記事に書いたあらすじはスペイン語版のあらすじで、実は翻訳版と少し違っていることも確認した。ハイウェイは 翻訳版=英語版ではマリリン・モンローの歯を取り戻すことになっている。そんな異同についても書きたかったがそれも書けなかった。

が、何と言っても悔やまれるのは以下のことを書けなかったこと。だから、ここで書いておく。

主人公にして途中までの語り手であるグスタボ・サンチェス・サンチェス、人呼んでハイウェイは「ジャニス・ジョップリンの物真似ができる」などと自己紹介する。そして「日本語で八まで数えられる。イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ」(10ページ)とある。なぜ、八までなのか? これは「世界一の競売人」であるハイウェイが日本人ケンタ・ユシミートから競売術を学んだからだ。その師匠の学校では「全員で目をつぶり、深呼吸しながら、日本語で一から八まで数えてレッスンは終了した」からだ。

つまり、この「ユシミート・メソッド」では最後にラジオ体操のリズムで深呼吸して(場合によってはラジオ体操をして?)レッスンを締めくくっていたのである。

なんだか面白くないか?

最寄りのものではないが、ジョナサンズ。なんとなく気になった。