2019年12月26日木曜日

困ったときは映画を観よう


昨日のこと。

届いた! バレリア・ルイセリ『俺の歯の話』松本健二訳(白水社)

しかし、これはメキシコ版とだいぶ異動のある英訳版を底本と定めて訳したものらしい。英語版の方がページ数も多い。つまり、写真左のスペイン語版(メキシコ版)で読んだ僕としては、その異動を確認しなければならない。NHKラジオのスペイン語講座テキストでの連載最終回をこの小説の話で締めようと思い、スペイン語版で読んだものをもとにまとめ、邦訳が出たら、たぶん語句の訂正程度で済むだろうと思い、準備していたのだ。ところが、そうはいかないらしいことが判明したという次第。

しかたがないから、映画を観てきた。もちろん、『スター・ウォーズ』だ。今回も監督はJJエイブラムズ。

3期・エピソード7-9の『スター・ウォーズ』はディズニーの配給なのだが、このところのディズニーはPCへの気配りというか、多様性の保証というか、そういう意識が強い。主人公は女の子になるし、有色人種なども多く(もともと多様なクリーチャーと多言語を用いた映画だったのだけど)、今回は(以前からそうだったのか?)さりげなくレズビアンのカップルをレジスタンス内に配置していたりする。前作・前々作の引用もある。あれはどうやったんだろう? 若きマーク・ハミルとキャリー・フィシャーの新たなシーン(映画内では回想にあたるけれども、以前の作品のフッテージを利用したわけではない)まである。合成であんなことまでできるということか? 

いかいにも怪しげで、実際、怪しい人物として今回存在感を発揮するのは、リチャード・E・グラントだ。ヒュー・グラントのお兄さんだ(というのは嘘だけど)。リチャード・E・グラント好きの僕としては嬉しい。

鑑賞後、ハンバーガーを食べながら『俺の歯の話』を読む。

話を戻して『俺の歯の話』。これは総統に……いや、相当に面白い。競売人の「俺」ことハイウェイことグスタボ・サンチェス・サンチェスが一人称で、その仕事を得、マリリン・モンローの歯を得て装着し、いろいろな歯を競売にかけ、装着していたマリリンの歯を息子に盗まれ、作家に出会うまでを語り、作家が今度は作家の側から彼の人生を語り直し、その後の人生(サミュエル・ピクウィックの歯を手に入れ、それを使って競売の語りを語る)を語り、……という話。登場人物が関係を取り結ぶ人物たちの多くが実在の作家や詩人の名をまとい、競売人の語りとして語られる話も何やら文学作品に言及したり、写真や地図への言及から成り立っていたりする。