2013年2月19日火曜日

雪の上野で前屈みになるについて


六本木に行く前に上野に行った。

エル・グレコ展(東京都美術館)

クレタ島、ヴェネツィア、ローマ、トレードと各時代のエル・グレコの作品を揃え、肖像画、聖人画像、祭壇画などと章分けして展示。たとえば「ディエゴ・デ・コバルービアスの肖像」をエル・グレコのものとアロンソ・サンチェス・コエーリョのもの、2つ並べ、エル・グレコの特長を際立たせるなどの工夫も面白い。最終章は「近代芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として」と題し、さすがに、教会での配置そのままに展示はできないまでも、実際にはこの絵はこんなところに描かれている、という説明つきで見せ、タブロー中心の近代絵画に慣れ親しんだ我々の感覚に問題提起している。

展示の意図を汲み、ぼくはたとえば、丸天井の天辺に描かれている「聖母戴冠」(1603-05)を前屈みになって見上げる恰好で眺めていた。きっと周囲はそんなぼくを胡乱な目で見ていたのだろうな。

ベルニーニ「聖テレジアの法悦」などに顕著だが、エル・グレコにも特徴的なのは、神秘体験をする者が首を傾げているということ(『裁かるゝジャンヌ』でのアントナン・アルトーもひどく首を傾げていた)。エル・グレコを観ていると、さきほどのかがむ姿勢でなくても、自然と首が傾いてくる。この後観た映画も、ぼくは首を傾げながら観ていたかもしれない。