2013年2月15日金曜日

実り多き金曜日


金曜の1限から他の授業の試験監督に駆り出されて早起き。やれやれ。

ウンベルト・エーコ『小説の森散策』和田忠彦訳(岩波文庫、2013)

は、ハーヴァードのノートン講義録というから、これはつまり、かつて『エーコの文学講義』として出された本の文庫化。

佐竹謙一『スペイン文学案内』(岩波文庫、2013)

佐竹さんは今、乗りに乗っているようだ。このあいだエスプロンセーダの翻訳を出したばかりなのに、もうこんな著書を出している。二部構成で、第一部は文学史の概説、第二部で主要作品の紹介をしている。なるべく邦訳のある作品を、との配慮があるのだろうか? しかし、長く『娘たちの「はい」』として知られていたモラティンの El sí de las niñas を『娘たちの空返事(からへんじ)』とするなど、独自性を出している。いちばん新しいところではリャマサーレスまでを紹介している。

これを読んでぼくも勉強しなきゃ。なにしろぼくはどうやらWikipedia上では「スペイン文学専攻」となっているようだから。本人、そんなこと言った記憶はないのだけどな(ぼくは恩師・牛島信明先生の提唱にしたがい、「スペイン語文学」としている。近・現代だけど。かつ、「ラテンアメリカ思想文化論」というのが入るけど。これは勤務先の授業などに合わせてのこと)。

そして、

アルベルト・ルイ=サンチェス『空気の名前』斎藤文子訳(白水社、2013)

をご恵贈いただいた。ルイ=サンチェス初の翻訳だ。北アフリカのモガドールを舞台に、謎の眼差しを持つ女ファトマをめぐる欲望の物語、のようだ。冒頭、ファトマはただ水平線を眺めている。そして「何かおかしなことが起こっている、と最初に気づいたのは祖母だった」(11ページ)。つまり、客体化され、それでもなおかつ気づかないではいられない不穏な何かを抱え持つ少女の話。示唆するところは多い。

これに関しては、近日中にまた報告しようじゃないか。