昨日はスペイン大使館に『侍とキリスト』宇野和美訳(平凡社、2011)の著者ラモン・ビラロの講演会を聴きに行った。
講演会というよりは、ジャーナリストのゴンサロ・ロブレードとの対話による本の紹介という感じだ。日本語版に解説をつけたルイス・フォンテス神父(ザビエルの子孫)や弥次郎の子孫なども参加。
ビラロは1986年だったか87年だったか、バブルに突入するころの日本に『エル・パイス』紙の特派員として滞在していたそうで、そのときのことや、小説にこめた思い、次にでる、日本をめぐる3冊目の本となるエッセイの話しなどをしていた。16世紀の異文化体験、といった調子で読めるこの小説、なかなか面白いので何かの授業で使えないだろうかと考えている。
授業と言えば、今日見つけたのは、ホルヘ・マンリーケ『父の死に寄せる詩』佐竹謙一訳(岩波文庫、2011)。
15世紀の名作詩だ。往年のサンティアーゴ騎士団長であるロドリーゴ・マンリーケ(ホルヘの父)の前に〈死〉が現れて、「永遠に続く生ともなれば/風塵を逃れぬかぎりは/実現しまい」(421-423行)などといい、それに答えて騎士団長が「神がもたらす死の命に/背いて今世にこだわるのは/狂気の沙汰」(444-446行)などと覚悟を決めるのだ。潔い無常観。
ペストの流行によって中世ヨーロッパに広まった『死の舞踏』。これの作者未詳によるスペイン版も併載。
訳者の佐竹さんによる解説もたっぷりな上に、マンリーケの詩は原文まで掲載されている。うむ。勉強になる。