2015年12月5日土曜日

不敬の刺激

坂手洋二作・演出「お召し列車」燐光群@座・高円寺

東京オリンピック(例のボツになったエンブレムがあちらこちらに貼ってあった。それだけでもう面白い)時の観光客向け特別「お召し列車」の構成を決めるための試運転の列車が舞台。無作為に選ばれた審査員たちが、豪華列車からなるA案と歴代ロイヤル・トレインをつなぐというB案の2つがプレゼンされるのだが、2案の車両の間に、ハンセン病患者向け「お召し列車」復元車両があることに気づき、これをC案として考慮に入れることにする。

「お召し列車」復元車両は、1953年、ハンセン病収容所内にできた高校に入学するために全国から移動する患者たちを乗せて走ったことがあり、その時、その列車に乗った元患者たちも招かれ、この列車に乗っている。かつてその高校に通い、後に収容所を出、身分を偽って結婚したものの、そうしてできた息子を亡くし、別れ、また別の収容所に入っていた女(渡辺美佐子)とその又めい(宗像祥子)、幼くして死んでしまった息子の幽霊(猪熊恒和)の話が、上の審査員たちの話と交錯する。


皇室の列車である「お召し列車」がハンセン病患者の列車の隠語でもあるという差別の構造がある以上、実は東京オリンピックの観光客向けの「お召し列車」にはある大胆で不敬、しかし説得力のあるひとつの仮定が存在するのだとの事実が露呈する瞬間があり、鳥肌が立つ。うーむ。2020年、東京オリンピック。もうそんな先の話ではない。

比較的席が前の方で、カーテンコールではちょうど松岡洋子さんが正面に立つ格好になった。ふふ♡