フランシスコ・サンチェス(文)、ナターシャ・ブストス(画)、管啓次郎(訳)『チェルノブイリ 家族の帰る場所』(朝日出版社、2012)
ご恵贈いただいた。ありがたい限り。
チェルノブイリと、そこで働く人たちの町プリピャチに住む3世代を「レオニードとガリア」(祖父母)、「ウラジミールとアンナ」(原発の職員とその妻)、「ユーリーとタチアーナ」(その子どもたちタチアーナは事故後の出生)という三部構成で描いた「グラフィック・ノヴェル」(マンガ)。この画風が何かを思い出させてしかたがないのだが、中国滞在経験のあるブストスは墨などを多用したイラストを描いているらしい。
墨なのだ、この黒は。墨の鮮やかな黒が印象的だ。事故後、放射線を浴びることを覚悟して帰る「レオニードとガリア」(とその隣人)、良く知らされなかったがために過去のことを知りたくて帰る孫の「ユーリーとタチアーナ」が、ある思い出の品によって繋がり、示唆的だ。
一方で、付録で知らされたのだが、描かれている映画館内の一コマで、スクリーンに投影されているのが『不思議惑星キン・ザ・ザ』であるところなど、いろいろな目配りが利いている。