オリンピックだ。
まあさしてオリンピックには興味もないのだが、普段から見ている種目ならば、観戦しなくもない。
錦織圭とアンディ・マレーの試合を見ていた。昨晩のことだ。試合はマレーの一方的な展開だった。やはりジョコビッチ、マレーとそれ以下の間には大きな開きがあるのだろうか?
それはまあいい。その試合、第2セットの途中にニュース速報が流れた。
いよいよか? と思った。いよいよ何なのかはわからない。でもまあ、ニュース速報にはそんなふうに身構えさせる何かがある。
で、流れてきたのは、「人気アイドルグループ スマップ解散。12月31日で 所属事務所発表」(文面は記憶に頼っているので、多少違うかも)との報。
なんだこれは?
どうなっているのだ?
この国は大丈夫なのか?
もちろん、SMAPの人気と知名度、その影響力を知らないわけではない。どういうわけか大学時代の同期の女性には木村拓哉はことに人気だ。それ以外のメンバーのファンだってたくさん知っている。
SMAPの先日の事務所移転騒動、異様な謝罪映像も知らないわけではない。愚だ、という印象を持つのみだが。
しかし、それにしてもなあ、オリンピックを中継していたのはNHKだった。ためしに、他局でこの速報が流れているか確かめるべくザッピングしてみた。それぞれ瞬時のことなので、断言はできないが、少なくとも僕は他局で確認できなかった。あるいはNHKだけのスクープなのかもしれない。
もしこれがNHKだけのスクープなのだとすれば(ツイッター上で流れてきたので、それ以前にどこかのスポーツ新聞が記事を掲載したことも知っている。だから文字どおりの「スクープ」というよりは、これは独占公式発表)、そこには別のレベルの考察を加えねばならないだろう。「所属事務所」つまりジャニーズ事務所の横柄というか何というか……
まあいいや、そのことを措いておこう。ともかく、これが深夜のNHKでニュース速報で流すようなことなのか、という話だ。
この価値観(SMAP解散はNHKがニュース速報で流すべきことである)が疑問を引き起こさないのだとすれば、この国は僕が思う以上に何らかの事態が進行しているのだろう。僕はその世界観にとり残されてしまっているのだ。「何らか事態」というのは、報道のサブカル化かサブカルの肥大化かだ。あるいは社会の幼児化だ。サミットの晩餐会にAKB48を出演させるような感覚の容認だ。社会における価値の序列の崩壊だ。
如何に「国民的」と呼びうるほどとはいえ、SMAPはたかだかアイドルだ。そんなのがニュース速報の価値に見合うのだと言われたら、SMAP支持者がそもそも迷惑がるのではないか?
でもそれは、たかだかエージェント(代理人)に過ぎないはずの「所属事務所」が、当のアーティストたちの意向の障害になっていいのだとうぬぼれることと似ているのかもしれない。