1957年8月1日の日記で、ゲバラは書いている。
Llegamos a Las Minas donde el pueblo estaba votado en la calle agasajándonos (Ernesto Che Guevara, Diario de un combatiente, México, Ocean Sur, 2011, p. 147)
〔我々がラス・ミナスに着くと、人々は街中でvotadoな状態になっていて、我々を歓待した〕
うーむ。votadoというのは、動詞votarの過去分詞で、votarした、し終えた、された、などの意の形容詞になる。votarは投票するの意の動詞。
選挙の話をしているのではない。だからこのvotarが謎でしかたがなかった。
数ページ先、8月6日にはこんな記述がある。
Inmediatamente, todo el pueblo se botó a saludarnos. (p.151)
(すぐさま人々が飛び出してきて、我々に挨拶した)
!
ゲバラは、あるいはその日記の編者はbとvを取り違えていたのだ。
いつものb/v問題だ。スペイン語ではbとvの発音上の区別はない。とされる。が、スペイン語圏のかなり多くの国では、学校などで区別するべきものだと教えられるようだ。しかし、もうひとひねりあって、そう教えられても、現実には区別しないひともたくさんいる。でもやっぱり区別したがる人も、負けず劣らずたくさんいる……という例の問題。
おそらく、ゲバラはb/vの区別をせず(何かの音声記録を持っていたように思う。後で確かめておこう)、それが記述に影響してbotar/votarを間違えたのだ。編者の間違いという可能性は消えないにしても、ともかく、こういう間違いを見ると、なんだか心が躍る。