2012年1月8日日曜日

b/v問題

ひとつ前の記事のタイトルを下らないダジャレのようなものにしたから、その罪滅ぼしというわけではないが、言語問題。

1957年8月1日の日記で、ゲバラは書いている。

Llegamos a Las Minas donde el pueblo estaba votado en la calle agasajándonos (Ernesto Che Guevara, Diario de un combatiente, México, Ocean Sur, 2011, p. 147)
〔我々がラス・ミナスに着くと、人々は街中でvotadoな状態になっていて、我々を歓待した〕

うーむ。votadoというのは、動詞votarの過去分詞で、votarした、し終えた、された、などの意の形容詞になる。votarは投票するの意の動詞。

選挙の話をしているのではない。だからこのvotarが謎でしかたがなかった。

数ページ先、8月6日にはこんな記述がある。

Inmediatamente, todo el pueblo se botó a saludarnos. (p.151)
(すぐさま人々が飛び出してきて、我々に挨拶した)

! 

ゲバラは、あるいはその日記の編者はbとvを取り違えていたのだ。

いつものb/v問題だ。スペイン語ではbとvの発音上の区別はない。とされる。が、スペイン語圏のかなり多くの国では、学校などで区別するべきものだと教えられるようだ。しかし、もうひとひねりあって、そう教えられても、現実には区別しないひともたくさんいる。でもやっぱり区別したがる人も、負けず劣らずたくさんいる……という例の問題。

おそらく、ゲバラはb/vの区別をせず(何かの音声記録を持っていたように思う。後で確かめておこう)、それが記述に影響してbotar/votarを間違えたのだ。編者の間違いという可能性は消えないにしても、ともかく、こういう間違いを見ると、なんだか心が躍る。