やれやれ。
この間、スタジャンが復活を遂げたと思ったら、今度はダッフルコートだとよ。これじゃあ30年前と同じじゃないか。30年前というのは、つまり、ぼくが高校を卒業した年だが……だってぼくは、センター試験の前身、共通一次試験のその日、雪が降ったので、当時持っていたダッフルコートを着て行った記憶があるのだ。やれやれ。
てなことを思ったのがつい先日、ダッフルコートが流行っているらしいことを察知したからだ。しかも、ずいぶんと短いものが!
あきれたような書きぶりで書いてみたが、何も嫌がっているわけではない。むしろ喜んでいるのかもしれない。ダッフルコート好きのぼくとしては。
人間の一生なんて一瞬の出来事やイメージに集約されるものだ。ぼくの一生はどんな出来事に集約されるのかまだわからないけれども、きっとそのときのぼくはダッフルコートか、でなかったらスタジャンを着て照れ笑いしているに違いないのだ。
やれやれ。
哀れな一生である。
……と言いながら、先日、近所のデパートにコーヒーを買いにいったついでにいろいろ冷やかしてみたら、50パーセント引きで売っていた、ダッフルコート。ダッフルコートというよりは、そのトグル。
背中や肩が凝ってバリバリになっているので、ぼくが必要としているのは防寒ではなく、凝りの解消なのだけど。
……おっと。肝心な話。これを着て買いに行った雑誌『文藝』2012年春号には先日のダムロッシュ来日の際の東大でのシンポジウム「世界文学とは何か」の、ダムロッシュと池澤夏樹の話が採録されている。これに、ヤニック・エネルへの小野正嗣のインタビューを加えて特集としている。これは助かる。来年度の授業の資料に使おう。
と思ったら、この雑誌の鴻巣友季子と市川真人の「国境なき文学団」で『ブエノスアイレス食堂』を取り上げてくださっていた。ありがたい。