2011年7月27日水曜日

「あるある」なんてないない

ツイッターのTL(タイムライン:フォローしている人物のツイートがすべて時系列順に表示される)上で、誰かが、自分のTL上に「#外大あるある」があふれている、と書いていた。

「#」はハッシュタグと言って、この形にすることによって、同テーマの検索がしやすくなるということ。つい先日までハッシュタグは日本語ではつけられなかったのだが、最近、日本語ハッシュタグが可能になった。検索欄に「#外大あるある」と打って検索すると、このタグをつけたツイートが表示される。

で、ツイッターには「トレンド」という欄があって、最近よく書かれたり検索されたりするキーワードが紹介されているのだが、気がつくとそこに「#北海道あるある」とか「#漫画家あるある」なんて語が並んでいる。

豊崎由美は自分のツイッターで、日本語ハッシュタグが可能になったことによってTLが大喜利の場と化していると書いていたが、まったくそのとおり。

ところで、しかし、「あるある」ってなんだ? ぼくにはまず、それがわからなかったのだ。しばらく読んでいて、ああ、つまり、「あるある、それってあるよね」と共感できる話題ということだと理解した。「読んでいる者、聞いている者の同意、共感を誘う日常トリビア」、とでも定義すればいいのだろう。

……でも、ところで、ぼくの語感にはその「あるある」を「あるある」と言いながら納得する感覚はないぞ。いったいこの語はどこから来ているのだ? 

で、こんなとき頼りになるのがJapan Knowledge。 http://www.japanknowledge.com/ 「あるある」で引いてみたら、「亀井肇の新語探検」や imidas などのリファレンスに「あるある」にまつわる項目がいくつか出ていた。

まず、80年代に「あるある族」というのがあったらしい。雑誌やTVなどで紹介された飲食店などに出かけて行っては、行ったことが「あるある」を自慢する人々。バブルの崩壊とともに消滅した、と亀井肇は定義している。

次に、「あるある系(芸人)」というのが、最近の流行だと、2003年の時点で亀井は記している。日常に見受けられる、共感を誘うできごとや現象をネタに笑いを誘う芸人たちの芸風のことだと。たぶん、今使われている「あるある」の意味だ。テツ&トモや永井秀和といった人々がこの系列に属すると。

そして、2006年には「あるある探検隊」という語が新語・流行語として imidas に登録されている。こちらは「レギュラー」というコンビのネタとしてだ。いまや「系」ではなく、ネタそのものの名となった。

一方で、2007年には「あるある大事典」というTV番組が情報を捏造したとかで、大きな社会問題になったらしい(覚えてないなあ)。ということは、そういう名の番組があったということで、つまり、「あるある」という語は(このTV番組における意味は知らないが)、こうして2000年代に入ってから定着していったということだろう。繰り返すが、ぼくにはその語を受け入れる感覚はない。80年代に忘れられた、ちょっと違う意味の「あるある族」の行方も気になるところ。

てなことを考えているのは、翻訳の途中、まったく何のことだかわからない一文に出くわし、逃避したくなったからだ。わからなくなるとツイッターに走る。#翻訳家あるある。