先般告知のごとく、「現代アートハウス入門:ネオクラシックをめぐる七夜」という催しの第3夜、アントニオ・レイス&マルガリーダ・コルデイロ監督『トラス・オス・モンテス』(ポルトガル、1976)を観に行った。というか、観て、その後、これを推薦した小田香さんとこの映画についてアフタートークをしてきた。トークが開始当初、音声トラブルで少し開始が遅れたが、その後は順調。
小田さんがまずこの映画を推薦した理由、この映画との出会いなどを語った(二度あったとのこと)一度目が友人のアンドレ・ジル・マタに薦められてのこと。アンドレはレイスが教えていた映画学校で学んだ経験がある、とのことだったので、それを引き取り、僕は彼の簡単な経歴を紹介、その後、この映画の舞台となったトラス・オス・モンテス地方について簡単に説明し、その裏としてスペインの側の国境地帯の秘境を撮ったブニュエルの『糧なき土地 ラス・ウルデス』があるとか、『ミツバチのささやき』との親和性などを話し、それからまた小田さんに気に入ったところ、その理由などを語っていただいた。
小田さんが「わからないところもけっこうあるのですが」とおっしゃったので、僕も安心して、わからないところがあると告白。あの14世紀の王様の手紙を読むシーンなど、なんなのだろう、とひとしきりわからなさを確認した。客席(全国数カ所のアートハウスを繋いでいた。僕はユーロスペースにいて、小田さんは大阪のシネ・ヌーヴォにいた)からもわからない箇所がある、などとの告白。なーんだ、みんなわかんないんじゃん、という感じで盛り上がった(のかな?)……
映画自体は、以前観たものではあったが、事前の準備のために2度ほど観た。加えて今回、会場でも観た。それでもラストの列車が夜の平原を走るショット(いや、列車は見えない。それは列車が吐き出す蒸気が平原から出て高速で駆け抜けていく絵なのだ)と、山羊がまるで「だるまさんが転んだ」で遊ぶ子供のように探り探り一歩ずつ前進するショットが交互に映されるシーンには皮膚を切り裂かれるようなゾクゾクしたスリルを感じたのだ。
本当はそれはたぶん、昼間読んでいた小説も関係している感覚なのだが、それについは、また後日。
これは人の皮膚は切れないナイフ。ペーパーナイフだ。