本当になんでアルモドバル映画は英題のカタカナ表記ばかりなのか? 『ペイン・アンド・グローリー』(スペイン、2019)
『欲望の法則』と『バッド・エデュケーション』とで三部作をなす作品とみなされているらしい。自伝三部作。過去と和解することによってスランプから立ち直る映画監督をびっしりひげを生やしたアントニオ・バンデラスが演じるのだから、なるほど、自伝的だ。
32年前の『風味』という作品のリマスター回顧上映に出るように依頼された映画監督のサルバドール(バンデラス)はまずこの映画が基で仲違いした主演俳優のアルベルト(アシエル・エチェアンディア)と和解する。ついでに彼が嗜んでいるヘロイン(これが不仲の始まりだったはずなのに)に手を出し、やめられなくなっていく。
ところが、言ってはならないことを言ったことによってアルベルトはサルバドールに腹を立て、また口をきかなくなる。サルバドールはアルベルトが気に入っているらしい短篇「中毒」を演劇として上演することを許可してまた和解。
「中毒」はかつて同棲していた恋人に語りかける形のテクストであったため、その上演を見た実際のかつての恋人フェデリコ(レオナルド・スバラーリャ)が会いに来る。過去の恋人との和解。
偶然見つけた絵が、少年時代にはじめて欲望に目覚めた日に描かれたものだった。それまで再三にわたって過去の回想シーンがあるのだが、その回想の中でバレンシアのパテルナにあるクエバ(洞窟型住居)に住んでいたサルバドール(アシエル・フローレス)はエドワルド(セサル・ビセンテ)という左官にその絵を描かれ、その日に自身の性の志向に気づいたのだった。それを「はじめての欲望」という新たなシナリオに仕上げるが、それはまた母ハシンタ(ペネロペ・クルス/フリエタ・セラーノ)との和解をも意味するものだった。
バンデラスが一度cabrónという単語を発音する。それは彼のいつもの言語にはないはずのものだが、フェデリコとともにメキシコで過ごしていたこともあると説明され、実際のフェデリコに会ったときにもふたたび発されるので、なるほど、と納得。ペネロペはアンダルシア風にしゃべっているように思ったのだが、それはどういうことだろう? クエバを見てアンダルシアだと思い込んだことが原因なのか?