2010年6月6日日曜日

今さらながら

村上春樹『1Q84 Book3』(新潮社、2010)

これは、前に書いたように、電車の中だけでしか読まないと決めていた(ちなみに、ぼくの普段の通勤は、車)。最後の数十ページだけその原則を崩して、京都のホテルで読了。

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は、主人公の頭の中にできた「世界の終わり」の町から、最後、出ていくか留まるかで逡巡した主人公の倫理的態度が物議を醸したような記憶がある。そのときの議論に対する返答のような決着のつけ方。

『世界の終わり……』では、さらに、地下に下っていく階段や、池の中に潜っていく結末など、下降が印象的だったが(その他にも村上春樹は穴の中に潜りたがる人々を書いている)、ここでは非常階段を上っていく。その意味でも対照的だ。

電車の中以外では読まないという原則を立て、それがおおむね守られたのも、この『1Q84』、Book2までで終わりにしていても良かったとのぼくの思いが覆されることがなかったからだ。ことさら必要な第三巻だとは思わないが、その第三巻でこんな決着をつけるのだから、これは意外に決定的な転換かもしれない。