昨日は英文の大橋洋一さんの退職を記念した現代文芸論主催の特別講義があった。実質、最終講義だ。最終講義という名目のものは英文主催で、英文の流儀に則り、東大英文学会として開催された。閉じたものだったので、ここはひとつ、現代文芸論の協力教員として長年ご尽力いただいた大橋さんには、公開で最終講義をしていただこうというのが、趣旨。
題目は「21世紀批評理論における4つのターン」。
「生態学的」「動物(論)的」「認知(論)的」「情動的」という4つの転回(ターン)について、代表的な論者の主張をまとめながら、主にカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』をそうした理論の転回の後の地点から読み直すという内容。近年、あまり理論の展開を追っていない身としては勉強になったのだ。
とりわけ、『わたしを離さないで』に「不在の原因」としての動物論を見るなど、うむ、なるほど、と唸るばかり。大橋さんは類似の例のひとつとして挙げていなかったけれども(志布志のうなぎのうなこのCMには言及された)、AGFのブレンディのCMで、とある学校の卒業式で、どうやら牛であるらしい卒業生たちが自分の行く先を示されて一喜一憂する(食肉になる者は泣き、ミルクがブレンディとなる者は喜び)というのがあったけれども(案の定、炎上した)、あれを見て『わたしを離さないで』を思い出した僕自身の連想に合点がいったのだった。
(写真はNHKラジオ『まいにちスペイン語』のテキスト4月号。ここに、この号から「スペイン語文学の現在」という連載をするのだ)