2016年4月27日水曜日

バスケスを芥川賞作家と読んできた

先日告知したイベント、「J・G・バスケスを芥川賞作家と読む」に行ってきた。

まずは『コスタグアナ秘史』の久野量一さんが、ゴンブロヴィッチ『トランスアトランティック』(西成彦訳、国書刊行会)に寄せたピグリアの論文(ゴンブロヴィッチをアルゼンチン文学もしくはラテンアメリカ文学として読む)やピグリアその人の『人工呼吸』(ゴンブロヴィッチへの応答)に感心し、他の言語で書かれたラテンアメリカ文学という視点からコンラッド『ノストローモ』に気づき、その評伝を書いたバスケスを知り、彼の書いた『コスタグアナ秘史』に出会い、訳したことを語った。

僕は、まずは冒頭のエスコバールの領地から逃げだしたカバのニュース記事を配ってそれが事実なのだと伝え、麻薬文化との関係でコロンビアの殺し屋(シカリオ)を扱った作品や、メキシコのナルコ小説、ナルコ映画、USAの側からの麻薬問題を扱った映画などの話をし、テッド・デミ『ブロウ』(2001)の裏として読むのも一興だと結論づけた。

小野正嗣さんはサンフランシスコの書店で山積みになっていた『物が落ちる音』英訳と出会い、面白さに魅了されたこと、仏訳の『コスタグアナ秘史』は対照的に語りが行ったり来たりで難しく、途中で投げ出して邦訳の出版を待ったこと、邦訳で読んでみるとその複雑な語りに仕組まれた試みの面白みがわかって負けず劣らず気に入ったことなどを語った。


さすがに小野さんの人気か、思ったよりも人が来ていた。満杯だった。