2014年11月23日日曜日

いわゆる”夢オチ"というのではなく

アレハンドロ・カソーナ『海の上の7つの叫び』(1952)は、大西洋横断客船の中の上級客室の8人が船長に呼び集められ、これから始まる戦争でこの船がおとりとなって沈められることが決まっている、だから銘々、覚悟を決め、自らの人生において犯した罪を告白するように、と命じられる話。妻への自殺教唆や売春の過去など、上流階級の人士の集まりのはずが、ひとりひとりはあまり立派ではない過去を抱えていることが明るみに出される。

ちょっと前に、あるところで、この船長役を演じている人物に会い、観に来てくださいよ、と言われていつものごとく安請け合いしたので、見に行ったという次第。

外語祭のスペイン語劇のことだ。ブエノスアイレスで初演されたこの亡命スペイン人劇作家による作品には食指を動かされたこともあり、約束を守って行ってきた。

台詞回し、というか、スペイン語のセリフの感じは、近年で一番のできだったと思う。もちろん、個人差はあるし、個々の音や個別の単語などでまずい発音はあるものの、リズムやイントネーション、スピードなどは平均的に良かった。演技そのものはまだまだ研鑽の余地が残ったという印象だが。

内容からわかるように、もちろん、言葉のやりとりが生命線であるような戯曲だ。セットや演出などに凝った味を出すのは難しい。だからこそ、その良くできた台詞回しに見合う身のこなし(演技というよりは、これだ。身のこなし)がもう少し訓練されているとよかったな、ということ。身のこなしと、間。

でも、しかし、演出はどこへ行ったのだ? パンフレットに書いてくれないと記載できないぞ。


字幕はこの写真のようにプロジェクタをセットして投影していた。こんな風に壁にポールでくくりつけた形は初めてだったのではないだろうか?