砂川仁成作・演出によるプロパガンダステージの公演『獅子』@阿佐ヶ谷ザムザ。友人が客演しているのだ。
あれ? 劇場って、こんなにたくさん若い人が来るところだっけ? というのが第一印象で、何しろこのところぼくは劇場での客の平均年齢の高さに常に不安を感じていたからなのだけど、でもまあ、こんなに平均年齢が若いのはいいことに違いない。
ぼく自身がまだ20代だったころ、同じくらい若い人の多い小さな劇場で観た劇では、盛んに最終戦争後のディストピアを思わせる話が展開されていて、これが「核時代の想像力」というものなのだろうな、などと、まだその大江の本など読んでいなかったのに思ったものだ。
ところが今回は、戦争の話。たったひとつの事例をとてつもなく拡大解釈して考えれば、うーむ、どうやらぼくたちは今、戦時にあるらしい。とりわけ映画会社で助監督として働く進藤栄太郎(吉川元祥)を中心とした友人3人組が、それぞれに違う人生を歩き始めたと思ったら、それぞれに召集を受けて出征、満州、沖縄、硫黄島、と散り、それぞれの関係者も東京の大空襲に消え、広島で原爆を浴び……という話。映画の話だと聞いていたが、むしろ戦争の話というべきか。阿部寛みたいな声でエキゾチックな顔立ちの鎌田秀勝の存在感が水際立っていた。
主人公が大船の撮影所に勤めているという設定だったので、松竹だろうが、そしてそれは蒲田から大船に移ったばかりの撮影所なのだろうが、ここでスター女優を張る高井絹代を演じるのが藤堂さわこ。なんだ、こんな今どきの子って感じの女優でも、戦前戦中のスターになり切れるんじゃないか。やるな。あ、ちなみに、客演している友人(って、本当は学生なんだけど)というのは彼女のことではない。サイトがあったので、ご紹介。
ともかく、そんなわけで、ぼくたちは戦時下にある。どのように降伏して、どのように復興を図るか、それが問題なのだ。と考えるのは、ぼく自身が復興計画を練っているからだろうか?