また更新を怠ってしまった。
その間に見た映画、演劇など。
ヴェルナー・ヘルツォーク『歩いて見た世界――ブルース・チャトウィンの足跡』(英国、2019)
7月で閉館する岩波ホールが最後に選んだ上映作品。
もちろん、『コブラ・ヴェルデ』の原作者と映画化作品監督であることは知ってはいたけれども、ヘルツォークとチャトウィンがそれ以上に親密な間柄であったことを知らず、そんな僕にはいろいろと発見も多かったのだ。『ウォダベ』の女性たちのカットを見せられ、少し元気になったチャトウィンは、しかし、その直後に最後の昏睡状態に陥ったとか、彼からの形見としてもらった革のリュックサックのおかげで、『彼方へ』の過酷な山岳ロケでヘルツォークは命拾いしたのだというエピソードなど。
オスカル・カタコラ『アンデス、ふたりぼっち』(ペルー、2017)。これは試写会で。公開は7月30日。
全篇アイマラ語による、アンデスの標高5,000メートルほどの場所にふたりきりで暮らす老夫婦の話。息子が帰ってくることを夢見ながら彼はいっこうに帰る気配はなく、マッチが切れたといっては遠くにある村まで買いに行かなければならないのだが、それもできず、飼っていた羊は何者かに食い荒らされ……といった厳しい生活を描いたもの。救いはない。ないからこそ見入ってしまう。cine regional などと呼ばれる部類の映画のメルクマールとなった作品。すごい。
そして今日、横浜で観てきたのが:
セルヒオ・ブランコ作、大澤遊演出『テーバスランド』KAAT 神奈川芸術劇場。甲本雅裕と浜中文一による2人劇。
父親殺しで服役中のマルティン(浜中)を実際に起用して彼の物語を劇化するつもりのS(甲本)は、しかし、内務省の許可を得ることができず、仕方なしに俳優のフェデリコ(浜中の二役)を起用して劇を作ることにする。マルティンと面会を重ね、それを基にフェデリコと話し合いとリハーサルを重ねる。劇は父親殺しの話なので、オイディプスの劇や『カラマーゾフの兄弟』などが想起され、……という、いわばメタフィクショナルな劇制作の物語。オートフィクションでもある。こういうものの好きな僕にとっては嬉しい作品。浜中文一が虐待され(たことが徐々に明らかになる)学歴も浅い繊細な殺人犯と俳優のふたつの役を演じ分けて印象的。
セルヒオ・ブランコはパリ在住のウルグワイ人劇作家・演出家。『テーバスランド』原作と『ナルキッソスの怒り』(いずれも仮屋浩子訳、北隆館、2019、2022)も買って帰ったのだった。
UT Café Bertholet rouge でのランチ。これは昨日のこと。