まだ主にガイダンスで本格的な授業に突入する前のこんな日には、招待をいただいては行けずにいた映画の試写になど行ってみたくなる。で、行ってきた:
ミシェル・フランコ『ニューオーダー』(メキシコ/クロックワークス、2020) ネイアン・ゴンサーレス、ディエゴ・ボネータ他
メキシコ市内の金持ちの娘マリアン(ゴンサーレス)が、結婚式の日に散々な目に遭う、といってしまえばそれまでだが、話はなかなかに複雑だ。そしてショッキングだ。
結婚式の最中、かつての家の使用人のロランド(エリヒオ・メレンデス)が妻の手術代を無心に来たが、家族の者がまともに取り合わないものだから、優しいマリアンが彼の代わりにクレジット・カードで手術代を払ってあげようとして彼の家に行く。ところが、街は労働者たちのデモでそれに対処するために軍が道路を閉鎖している。どうにかロランドの家に着くものの、そんな状況なので彼の妻を病院に連れて行くことはできない。
実は、その間、マリアンの家にはデモに参加した者たちらしき人々が侵入してきて発砲、略奪を働く。彼女の父親は重症を負い、母は死ぬ。
軍は戒厳令を敷き、新体制に入る。そしてマリアンは軍人たちに救助される……と思ったらここで一ひねり。軍部も一枚岩ではなかった……とそれ以上書いたらいわゆる「ネタバレ」だろうか。軍には軍の沽券というものがあり、おかげでストーリーはその後も二ひねりくらいある。パーティーの群衆の中を人物たちが動きまわる映画的な目眩の映像が暴力によってブレイクし、緊張感に満ちた犯罪ストーリーに転じる。
デモ隊の者たちが緑色の液体を自動車や家の壁にぶつけたりしている。いや、それ以前にオープニングの導入部で緑色の液体の無気味さが印象づけられる。マリアンは鮮やかな赤いスーツを着ている。その後、おびただしい量の赤い血が流れる。緑と赤。メキシコの国旗だ。ラストは掲揚された三色旗の映像を目に植えつけて終わる。あくまでも緑と赤の保護色が対立しながら印象づけられる。ストーリーは特にメキシコの現実の事件を基にしているわけではないが、こうしたメタメッセージがメキシコと叫んでいる。
でも、では赤と緑の間に入るもう一色、白はどこへ行ったのか? どこにあるのか?
6月4日公開とのこと。渋谷イメージフォーラム他。
これは日曜日にいただいたガトーショコラ。白ではない。チョコ色だ。でも隣に白がある。近所の休日だけ営業の喫茶店で。