2020年12月27日日曜日

愛おしいぞ

2日前のことではあるが、届いた!


西崎憲編『kaze no tanbun 移動図書館の子どもたち』(柏書房、2021)。


僕はここに「高倉の書庫/砂の図書館」という「短文」を掲載している(125-40ページ)。以前、やはり西崎憲さんの編集する『文学ムックたべるのがおそい』7号に「儀志直始末記」という短篇小説を発表した。そこでは盲目となる自らの運命と折り合いをつけるためにボルヘスになることを決意した伊地知孝行という人物を作り出したのだが、実はそう決意する前から彼はボルヘス的な環境に生きていたのだという話……なのか? 基本的には僕が小学生のころに読んでいた学研の〈中学生の本棚〉シリーズをめぐる思い出を島尾ミホでまとめたもの、という方がわかりやすい説明かもしれない。


しかし、それにしても、執筆陣が豪華で、自分が恥ずかしいくらいである。編者の西崎憲も書いているが、その他には我妻俊樹、円城塔、大前粟生、勝山海百合、木下古栗、古谷田奈月、斎藤真理子、乗金顕斗、伴名練、藤野可織、星野智幸、松永美穂、水原涼、宮内悠介、そして、僕だ。な? 気後れするだろ?


星野さん(「おぼえ屋ふねす続々々々々」! ボルヘスの笑える要素をうまい具合に引き出していて面白い)と僕とでゾーン〈ボルヘス〉を形成する。そこに勝山さんが加わってゾーン〈スペイン語〉が成り立つ(彼女の作品はタイトルが作品内の謎への解答になっている)。何しろタイトルが「チョコラテ・ベルガ」だからだ。 “Chocolate belga” だな。ほかにもおもしろい作品ばかりだ。松永さんはアンナ・ゼーガーズとその子供、そして宮本百合子を重ね、そこに「自分」を重ねる文章。ゼーガーズだ! 


装丁も可愛らしいし、タイトルに合わせて図書貸し出しカードのような栞がついていて、それがまた可愛らしい。そしてその裏には執筆者のうちの誰かの短詩が印刷されている。僕のは自分の作品の前口上みたいなものだ。